wwwroot フォルダにある静的ファイル以外にも asp-append-version を適用する
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環境
- Visual Studio
-
- Visual Studio 2019
- ASP.NET Core
-
- 3.1 (Razor ページ, MVC)
wwwroot フォルダ以外に配置した静的ファイルには asp-append-version が反映されない
app.UseStaticFiles
メソッドを追加で呼び出し StaticFileOptions
を指定することによって
wwwroot 以外のフォルダにも静的ファイルを配置することが可能です。
しかし、wwwroot フォルダ以外に配置した静的ファイルに対して link タグや script タグに
asp-append-version
属性を設定しても URL にバージョン情報が付加されません。
試しに確認してみます。ファイルは以下の構成で配置しています。
Startup.Configure
メソッドで Areas/Site1/Content フォルダも公開できるように設定しています。
// wwwroot フォルダで静的ファイル参照を有効にする
app.UseStaticFiles();
// Site1 用の物理コンテンツフォルダと参照 URL を紐づける
app.UseStaticFiles(new StaticFileOptions()
{
FileProvider = new PhysicalFileProvider(Path.Combine(env.ContentRootPath, "Areas/Site1/Content")),
RequestPath = "/Site1",
});
以下は index.cshtml
に追加したコードです。それぞれに asp-append-version
を付加しています。
<!-- ここから追加 -->
<!-- wwwroot のファイル -->
<img src="~/image/sample.png" asp-append-version="true" />
<!-- wwwroot 以外のファイル -->
<img src="~/site1/image/sample1.png" asp-append-version="true" />
<!-- ここからまで -->
実行すると画像は正しく表示されています。
しかし、ページの HTML を見てみると wwwroot に配置したファイルにしか文字列が展開されていないことが分かります。
asp-append-version が反映されない原因
asp-append-version が反映されるかどうかを決定しているのは env.WebRootFileProvider
プロパティに設定している IFileProvider
によります。
既定では wwwroot 指定の PhysicalFileProvider
が設定されているため、他のフォルダには反映されないのです。
一応、複数の IFileProvider
を持つことができる CompositeFileProvider
クラスというものがあり、
こちらに PhysicalFileProvider
を複数詰め込んで env.WebRootFileProvider
に渡すこともできるのですが、
あくまでも物理フォルダパスのみ複数渡せるものであり、
StaticFileOptions.RequestPath
を複数指定できるわけではありませんので、意図した動作にはならないと思います。
※
env.WebRootFileProvider
とはStartup.Configure
メソッドで受け取っているIWebHostEnvironment env
の事です。
IFileProvider を継承して独自のクラスを作る
ASP.NET Core にある標準機能のみでは対応できないため、独自の FileProvider を作成します。
using System;
using System.Collections.Generic;
using Microsoft.AspNetCore.Builder;
using Microsoft.Extensions.Primitives;
namespace Microsoft.Extensions.FileProviders
{
<summary>
wwwroot フォルダ以外のファイルで "asp-append-version”を有効にするための複数の <see cref="StaticFileOptions"/> を管理するファイルプロバイダです。
</summary>
class CompositeStaticFileOptionsProvider : IFileProvider
{
private readonly IFileProvider _webRootFileProvider;
private readonly IEnumerable<StaticFileOptions> _staticFileOptions;
<summary>
コンストラクタです。
</summary>
<param name="webRootFileProvider">
デフォルトの wwwroot が設定されている WebRootFileProvider を指定します。通常は env.WebRootFileProvider を指定してください。
これは追加した <see cref="StaticFileOptions"/> がヒットしなかった場合に使用するためです。
</param>
<param name="staticFileOptions">
追加した静的ファイルオプションの一覧です。
FileProvider と RequestPath が設定されている必要があります。
</param>
public CompositeStaticFileOptionsProvider(IFileProvider webRootFileProvider, IEnumerable<StaticFileOptions> staticFileOptions)
{
_webRootFileProvider = webRootFileProvider ?? throw new ArgumentNullException(nameof(webRootFileProvider));
_staticFileOptions = staticFileOptions;
}
<summary>
指定されたパスにあるディレクトリを列挙します(存在する場合)。
</summary>
<param name="subpath">ディレクトリを識別する相対パス。</param>
<returns>ディレクトリの内容を返します。</returns>
public IDirectoryContents GetDirectoryContents(string subpath)
{
var result = GetFileProvider(subpath);
return result.FileProvider.GetDirectoryContents(result.StaticFileRelativePath);
}
<summary>
指定されたパスでファイルを見つけます。
</summary>
<param name="subpath">ファイルを識別する相対パス。</param>
<returns>ファイル情報。 発信者はExistsプロパティを確認する必要があります。</returns>
public IFileInfo GetFileInfo(string subpath)
{
var result = GetFileProvider(subpath);
return result.FileProvider.GetFileInfo(result.StaticFileRelativePath);
}
<summary>
指定されたフィルターの Microsoft.Extensions.Primitives.IChangeToken を作成します。
</summary>
<param name="filter">監視するファイルまたはフォルダーを決定するために使用されるフィルター文字列。 例:**/*.cs、*.*、subFolder/**/*.cshtml。</param>
<returns>ファイル一致フィルターが追加、変更、または削除されたときに通知される Microsoft.Extensions.Primitives.IChangeToken。</returns>
public IChangeToken Watch(string filter)
{
var result = GetFileProvider(filter);
return result.FileProvider.Watch(result.StaticFileRelativePath);
}
<summary>
指定された相対 URL に含まれる <see cref="StaticFileOptions"/> を探し、その FileProvider と静的ファイルへの相対パスを返します。
見つからなかった場合は wwwroot を持つ FileProvider を返します。
</summary>
<param name="path">アクセスされたホスト名以降の相対 URL。</param>
<returns>検索された <see cref="StaticFileOptions"/> の FileProvider と RequestPath から静的ファイルへの相対パス。</returns>
private (IFileProvider FileProvider, string StaticFileRelativePath) GetFileProvider(string path)
{
if (_staticFileOptions != null)
{
foreach (var option in _staticFileOptions)
{
// 登録している RequestPath とアクセスされた URL の大文字小文字が異なる場合があるので OrdinalIgnoreCase を指定
if (path.StartsWith(option.RequestPath, StringComparison.OrdinalIgnoreCase))
{
return (option.FileProvider, path[option.RequestPath.Value.Length..]);
}
}
}
return (_webRootFileProvider, path);
}
}
}
長いので細かいところの説明は省きますが、簡単に説明すると、
まず作成した StaticFileOptions
の一覧をこのクラスですべて持っておきます。
このクラスは後で env.WebRootFileProvider
プロパティにセットしておきます。
クライアントからアクセスされると各メソッドが呼ばれるので URL をもとにどの StaticFileOptions
の静的ファイルにアクセスしたかを検索し、
ヒットした StaticFileOptions
の FileProvider
と静的ファイルへの相対パスを返します。StaticFileOptions にヒットしなかった場合はデフォルトの FileProvider を返すことによって wwwroot の設定が適用されます。
各処理で正しいファイル情報を返すと asp-append-version
属性が反映されるようになります。
ちなみにこの作成したコードはどこにおいても構いません。
独自のクラス (CompositeStaticFileOptionsProvider) を適用する
Startup.Configure
では以下のように修正します。
書いてある通りなので特に説明するようなものはありません。
StaticFileOptions
を配列でまとめているところぐらいです。
public void Configure(IApplicationBuilder app, IWebHostEnvironment env)
{
// 省略
app.UseHttpsRedirection();
// ここから修正
var staticOptions = new StaticFileOptions[]
{
// Site1 用の物理コンテンツフォルダと参照 URL を紐づける
new StaticFileOptions()
{
FileProvider = new PhysicalFileProvider(Path.Combine(env.ContentRootPath, "Areas/Site1/Content")),
RequestPath = "/Site1",
},
// 複数ある場合はこんな感じで追加
//new StaticFileOptions()
//{
// FileProvider = new PhysicalFileProvider(Path.Combine(env.ContentRootPath, "Areas/Site2/Content")),
// RequestPath = "/Site2",
//},
};
// wwwroot フォルダで静的ファイル参照を有効にする
app.UseStaticFiles();
// 追加したい StaticFileOptions
foreach (var option in staticOptions)
{
app.UseStaticFiles(option);
}
// StaticFileOptions を独自クラスでまとめて WebRootFileProvider にセットする
var compositeProvider = new CompositeStaticFileOptionsProvider(env.WebRootFileProvider, staticOptions);
env.WebRootFileProvider = compositeProvider;
// ここまで修正
app.UseRouting();
// 省略
}
これで実行してみると wwwroot 以外のフォルダに配置した静的ファイルにも asp-append-version
属性が反映されていることが分かります。